矯正治療とは歯並びを正す治療です。不正な歯並び(歯列不正)により引き起こされる弊害はいくつかありますが、まず第一に挙げられるものは審美的障害です。顔貌と調和した歯並びへと改善させることにより、審美的に改善させる事ができます。さらに審美的な改善は「人前で歯を見せて笑える様になった」「自分に自信が持てる様になった」などの心理的な改善へとつながります。
他には歯列不正からくる障害として発音障害があります。発音は歯列に影響を受けます。
例えば前歯が口唇閉鎖を邪魔するような歯並びでは「パ行」のような一度唇を閉じてから発する音に障害が出ます。矯正治療により歯並びを改善することにより発音障害を改善させることもできます。また咀嚼能力は咬合接触面積(咬み合わさっている部分の表面積)の多さに関係します。
矯正治療により咬合接触面積を適正にすることにより食べやすくなります。さらに歯列不正は歯磨きの難しさから歯周病や虫歯等の口腔内疾患に罹患しやすくなります。矯正治療とは歯列不正を治す事により審美的障害および機能的障害を改善させる治療です。
単に美しさだけを求めるものでも、機能的なもだけを求めるものでもありません。美しく咬める歯を作ることが矯正治療の目的になります。

治療方法は不正咬合の状態によって多少異なる事がありますが、歯並びが悪い人は顎骨の大きさと歯の大きさのつりあいが取れていない場合が多い様です。小さな顎に大きな歯が並べば不調和が起ります。その不調和として並びきらなかった歯が歯列よりはみ出ることにより出っ歯になったり、乱杭歯、八重歯等になったりします。このような場合はまず抜歯をして顎骨と歯の大きさの不調和を取り除く必要があります。その後マルチブラケットシステムにより不正咬合を治す様に歯を移動させて、抜歯によりできた隙間(抜歯スペース)も閉じます。
マルチブラケットシステムによる治療は大きくわけて4つの段階から構成されます。

1. レベリング:乱れた歯列をきれいなアーチ状に並べます。この時点ではまだ隙間は残っていますが、歯列の凹凸を無くす事が目的です。
2. 犬歯の遠心移動:犬歯を後ろに送って隙間を集めます。
3. スペースクロージング:歯列上にあるすべての隙間を閉鎖させます。
4. アイディアルアーチ:緊密に咬合させる仕上げの段階です。
ほとんどの症例はマルチブラケットシステムにより治療することができます。