歯周病とは、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが破壊される病気で、 かつては歯槽膿漏と言われていました。 歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)に細菌が入り、歯肉が炎症を起こし赤く腫れて、ブラッシング時に出血します。 しかし、痛みは全くありません。 さらに進行すると、歯肉の中にある歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けて、膿が出たり歯がグラグラしてきます。 この時期になると、やっと痛みや腫れを伴います。 そして、最後には歯が抜けてしまいます。その理由として、初期の段階では虫歯のように歯に穴があいたり、痛くなったりと言ったはっきりとした症状が現れにくく、 かなり進行しないと、痛みや腫れと言う自覚症状が現れないからです。 さらに、日本人には歯の定期検診を受ける習慣があまりないこと、また歯周病を確実に治療できる歯科医が残念ながら 非常に少ないことなどが考えられます。一生自分の歯で噛むためには、むし歯の予防と同時に歯周病の予防と適切な治療が大切なのです。

■ 実際の症例
歯肉の色:赤紫色
歯肉の形態:歯と接している歯肉がさらにぶよぶよに腫れ、退縮する。

ブラッシングで出血や膿が出る。歯と歯の間が広がり、食べ物もよく詰まる。 歯肉が退縮して、歯が長く見える。炎症はさらに進み、歯周ポケットは深くなり 深部の歯垢中の細菌は毒性が強く骨(歯槽骨)を破壊し、溶かします
1. 基本治療
初期、中等度、重度歯周病における基本的な治療です。歯肉溝(病的では歯周ポケット)の深さを測定し、歯垢、歯石を除去します。(スケーリング、ルートプレーニング、ブラッシング)スケーリングは歯、根表面に付着した歯垢、歯石を機械、器具にて除去することです。ルートプレーニングは根表面を滑沢にする方法です。
これにより歯周組織が改善され歯肉溝の深さが浅く(1~3㎜)維持されれば、メンテナンスに移行します。

2.歯周外科治療
歯周基本治療で一部ポケットの深さが改善されず(4㎜以上)、プラークコントロール が困難な場合や、歯周病が進行し、歯槽骨の吸収が進んでしまった場合、外科的に歯 周ポケットの深さを減少させる手術(切除型)があります。また生体材料を用いて、部分的に失われた歯槽骨を再生させる手術法(歯周組織再生療法)を行う場合もあります。
治療により歯周組織が改善され、歯周ポケットの深さが浅く(1~3㎜)維持されればメンテナンスに移行します。

3.メンテナンス
歯周病の再発防止と健康を維持して頂くために、定期的に検査と予防処置を行うことが重要です。
歯周病の再発を防ぐには各個人にあったメンテナンスプログラムに参加され歯周病のチェックならび歯垢、歯石の除去などのクリーニング(PMTC)を行うことが何よりも重要です。

タバコを吸う人は吸わない人に比べて歯周病に罹りやすく、進行も早くなり、治療を初めても治りにくい傾向にあることが、最近の研究でわかってきました。
タバコは歯周組織に非常に悪い影響を及ぼします。タバコに含まれているニコチンは、歯肉の血液の流れを悪くして、歯肉に酸素行き渡らせなくします。また歯肉の抵抗力が弱まり、細菌と戦う白血球の働きが半分程度になり、免疫力も低下して行きます。
またタバコは唾液の分泌を抑えるため、プラーク、歯石がつきやすくなります。
タバコの本数が多ければ多いほど歯周病に罹りやすく、重症化することがわかっています。タバコを吸っている方はいくらしっかり歯を磨き、歯科医院に通院しても歯周病がよくならないことがわかっていますのでまずは禁煙されることをお勧めします。

■ 非喫煙者
みずみずしいピンク色の歯肉
健康な歯周組織
光沢のある白い歯
美味しく食事を味わえる
爽やかな息
■ 喫煙者
メラニン色素沈着による歯肉の黒色化
進行した歯周病
タールの沈着による歯面の着色
味覚の鈍麻
不快な口臭
鏡を見て、お口の中を観察することはありますか。大切なものは見て確認することが大事です。

むし歯は歯がしみるから見て確認しなくてもいいかな・・・ここしばらく、口の中を見ていなかったという方は要注意! 40歳以降の歯の喪失の主要な原因である歯周病は、むし歯と違い痛みが少ないのが特徴です。(サイレントディジーズ:歯周病は静かに進行する病気)
毎日、鏡で顔や姿を見るように、歯や歯ぐきのチェックをしましょう。歯や歯ぐきの異常は、自分の目で確認することができます。

1. 歯肉が腫れている。
2. 歯磨き時、よく出血する。
3. 歯周ポケットから膿が出る。
4. 歯がグラグラする
5. 歯肉がむずがゆがったり、噛むと痛い。
6. 歯とはとの間によく物が挟まる。
7. 口臭が気になる。
8. 朝起きた時、口の中が粘つく。
9. 歯が浮いた様な感じがする。
10. 歯肉が痩せて歯が長く見える。
該当する項目はありましたか? 一つでもあれば要注意です。
メインテナンスとは歯周病を再発させず、健康な状態を維持していくための定期的な治療のことです。治療が終了した後は、症例によりますが4~8週ごとの受診をお勧めします。

歯周病は主に口腔内の細菌が原因で発病する疾患です。したがって、この細菌を生涯除去し続けることが歯周病を予防し、お口の健康を維持するために必要となります。 細菌の集団である歯垢は、毎日の適切なブラッシングでほとんど除去することが出来ますが、深い歯周ポケットの中や歯並びの悪い所にある細菌は ブラッシングでは除去できません。これらは歯科衛生士による専門的なクリーニング(PMTC)によって除去してもらいましょう。

PMTCでは歯肉のラインよりポケットの中にかけて深さ1~3mmまでのプラーク(細菌バイオフィルム)を選択除去します。バイオフィルムの駆逐は、抗菌剤などの化学療法では不可能なので、機械的清掃が必須となります。つまり、PMTCでバイオフィルム破壊と再形成阻止を行い、歯周病やう蝕を予防していくのです。歯肉のラインより下のポケットの細菌叢は4~8週で術前にリバウンドすると言われており、メインテナンスの間隔はひとつの目安としてその範囲内で行うべきと考えられます。
歯周病は再発の多い病気と言われています。治療により症状が改善したとしても、そこは一度歯周病に侵されたところです。治ったといっても溶けてしまった骨が元通りに戻っているわけではなく、ほとんどが歯と歯肉が弱い結合で治っているのにすぎないのです。ブラッシングが不十分であったり、メインテナンスを怠ると細菌が活動しはじめ歯周ポケットが深くなり容易に「再発」を起こします。

また、残念ながら治療の限界のため、部分的に治りきらないところが残ってしまうこともあるでしょう。そのような部位でもメインテナンスを継続することにより歯周ポケットがさらに深くならないように、「進行を食い止める」ことができるのです。
歯肉切除型手術法でも解決できないくらい歯周病が進行している場合は、最先端の歯周組織再生治療が必要となります。
再生医学のなかで実際に患者様に治療する再生治療を行っているのがティッシュエンジニアリングです。
歯周組織再生治療は組織細胞工学(ティッシュエンジニアリング)に基づいたもので、組織が回復する細胞(幹細胞:stem cell)、足場(スペース:scaffolds),増殖因子(成長因子:growth factor)の3つの要素を原理としており、これらの要素が最適な環境下で、適切な時間作用し合い、統合されて再生が可能となります。
3つの要素のうちどれか一つ欠けてもティッシュエンジニアリングによる治療効果は得られません。
現在、再生治療においてエムドゲインゲルは、歯周病で失われた組織(歯根膜、歯槽骨、セメント質、歯肉)を再生させることができる再生用材料(成長因子: growth factor)です。
エムドゲインゲルはスウェーデンのビオラ社で開発された新しいブタ歯胚歯周組織使用歯周組織再生用材料です。エムドゲインゲルの主成分(エナメルマトリックスデリバティブ)は、子供の頃、歯が生えてくる時期において重要な働きをする蛋白質の一種です。
現在の科学水準に基づく高い安全確保の下、幼若ブタの歯胚から抽出精製したもので、2009年3月現在、世界44カ国にて使用されています。この治療は高度な知識、技術はもちろんのこと、臨床経験がなければ難しい治療となるため、受けられる医療機関がまだまだ少ないのが現状です。